ミニ法話㉗

ミニ法話-川柳シリーズ第27回-

「死ぬことを 忘れていても みんな死に」


 


 一日も早いコロナウイルス感染拡大の収束が願われている中、感染すれば死に至る不安から、「自分や家族が感染するのではないか」という恐怖が大きくなり、感染者等を排除する意識が生まれ、差別や嫌がらせ、インターネット上では心無い言葉や誹謗中傷が飛び交い、社会問題になっています。

 親鸞聖人が生きられた鎌倉時代も、多くの方が疫病などで亡くなられたと「方丈記」(鴨長明)に記されています。聖人はそのような現状をどのように受けとられておられたのでしょう。

 「末燈鈔」に「老少男女、多くの人々が亡くなられたのは気の毒だけど、この身は生死無常であると、如来さまが詳しくお説きになっているのだから、何も驚くことはない」と述べられています。

 それは、不安から逃げず、不安に負けて無用に他者を傷つけたり責めたりせず、むしろ不安をきっかけに、いつかは終わる私の人生を見つめ直し、共に生きてほしいという聖人の励ましの言葉です。

 人間はいつまでも生きられない身の事実ならばこそ、生まれてきた意義や、今生きることの大切さを考えてみたいものです。


2020年10月12日